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2017年3月16日 日銀総裁会見 ノート

金融政策決定会合

本日の決定会合では、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)のもとで、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定した。短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。長期金利について10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。長期国債以外の資産の買入れについては、これまで通りとする。わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。海外経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。この間、住宅投資と公共投資は、横ばい圏内の動きとなっている。以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して、鉱工業生産は持ち直している。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。先行きのわが国経済は、緩やかな拡大に転じていくとみられる。国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、海外経済の改善を背景として、基調として緩やかに増加するとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。
リスク要因としては、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、中国をはじめとする新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱問題の帰趨やその影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開、地政学的リスクなどが挙げられる。
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタム(勢い)を維持するため、必要な政策の調整を行う。

Q&A

Q:米国は利上げを決めた。EUも物価が上がっている。日本は取り残されている?


日米欧の消費者物価の動向を見ると、原油価格下落の影響が縮小するもとで、いずれの地域も物価が上がる傾向があることは共通している。エネルギー価格を除いた基調的な物価の動きについては差がある。米国では労働市場・雇用が拡大し、賃金上昇のもとでコアベースのインフレ率は、前年比+1%台後半の推移を続けている。欧州はコアベースのインフレ率は前年比+1%弱で推移し、ECBは基調としては上昇トレンドは見られていないとしている。日本は、消費者物価(除く生鮮食品)は+0.1%と2015年12月以来のプラスに転じた。生鮮食品・エネルギーを除くベースでは、昨年以降前年比でプラス幅の縮小傾向が続いた後、このところは一進一退の動き。1月は+0.2%となっている。2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているものの、力強さに欠けていると判断している。先行は、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な物価上昇率が高まるにつれて2%に向けて上昇率を高めていくと考えている。

Q:春闘で小幅ながら4年連続ベア(賃金値上げ)実施。その感想と物価への影響は?


春闘は現在労使間で交渉中。見極めが必要。大企業は4年連続ベア実施が見込まれる。日本銀行は、企業収益や賃金上昇を伴いながら消費者物価上昇率が緩やかに高まっていく好循環を作り出していくことを目指している。4年連続ベア実現に向けて動きはこうした経済の好循環の実現を後押しするものと思う。今後とも前向きの取り組みが拡がっていくことを期待する。

Q:米国利上げによる世界の金融市場への影響は?


コメントは差し控えたい。ただ、声明文では物価は上昇しており、長期目標の2%に近づいている。また、イエレン氏は米国経済は雇用と物価の目標を達成し維持するための金利の上昇を正当化する形で展開すると予想していると確認している。今後も米国経済や世界の金融情勢を見極めながら適切な判断を行っていかれるものと考えている。現時点で、米国の金利上昇が新興国の経済に深刻な影響を与えているという状況にはないと思っているが新興国も様々なので、今後も注視する。

Q:17日からのG20の見通しは?


会合では世界経済の現状と先行き、国際金融情勢について議論が行われる。G20として従来からの成長戦略の実施状況や金融規制の改革、国際金融アーキテクチャーなどについても引き続き議論をしていく。今回のG20では、米国の新政権のもとでムニューシン財務長官が初めて出席されるので、米国の経済政策についても深い関心が持たれると思う。

Q:長期金利の操作目標を引上げるのではないかとの観測もあるが?長期金利はいつ上げる?その条件は?


長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)のもとで、経済、物価、金融の状況を踏まえながら2%の物価安定目標に向けたモメンタムを維持するために、最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すことにしており、長期金利の操作目標についてもこの考え方にたって、毎回の決定会合で判断していく。現状では物価安定目標まで距離があり、早期に実現するためには、現在の方針のもとで強力な金融緩和を推進していく。

Q:G20で保護主義への対抗や通貨安政策の回避の文言(声明文)で削除されるとの観測があるが?


現時点で声明文の内容に言及することは避けたい。ただ、従来からG20に限らず、IMFにしてもOECDにしても保護主義が世界貿易の伸び率を低下させることになると、世界経済の成長自体もよくない影響があるということで自由な貿易統治体制というものを維持していく必要があると言われている。その点について私も日本も考え方が変わるということはないと思う。為替については財務省の所管。コメントは差し控えたいが、為替についても国際的な議論や合意ができているし、財務省が考え方を変えるとは認識していない。

Q:今回の決定会合の資料の「リスク要因」としての米国経済とは?を詳しく。


米国経済自体は順調に成長しており、雇用・所得環境が改善する中で家計支出を中心に回復しているが、それだけでなく企業部門を含めて米国経済全体として改善している。特に個人消費がしっかり伸びているし、雇用は消費の伸びを支える改善が続いている。ゆえに米国経済に心配する必要があるとは考えていない。他方で、新政権の減税インフラ投資で財政の拡張を主張しており、議会で法案や予算が通らなければ実現できないので、それは今後の在り方次第。また通商政策も具体的なものは出てきていない。そういった意味で財政政策や規制緩和を中心にした構造改革などについても具体的なものは出てきていないので不確実性が残っているが、米国経済は現状も先行きもかなりしっかりしてきていると思っている。

Q:長期金利を上げる条件は将来的に整備する?


日本銀行の金融政策は、2%の物価安定目標を早期に実現するために行われる。金融政策の運営については、原油価格が最近動きやすいので、物価の基調を的確に判断する必要がある。具体的には、エネルギー価格を除いた指標を含めて様々な物価指標を点検するとともに物価の基調を点検する要因である需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率の動向、それらの背後にある経済の動きに合わせて判断するので、それらを勘案して毎回の決定会合で決める。よって、条件を設けるものではないと思う。

Q:ヤマト運輸の料金体系見直し(値上げ)など、コストに見合う対価を支払う考え方が消費者に受け入れられる?物価への影響は?


個別企業の経営判断についてのコメントは適当でないが、一般論として日本銀行としては2%の物価安定目標を実現するにあたって企業収益・賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が次第に高まる好循環を作ることを目標としているので、企業が人手不足に対応して持続的に労働力を確保していくための取り組みを勧めるとともに、そのために財やサービスの価格などを見直すといった動きは好循環のメカニズムに沿ったものと考えている。

Q:イールドカーブコントロール導入以降、世界的に金利上昇。緩和の効果を認識している?その効果はどこに出ている?景気に下振れリスクについては?


イールドカーブコントロールは、適切なイールドカーブを形成するもの。日銀の緩和は実質金利を引き下げることを考えている。実質金利を引き下げる場合は、名目金利を引き下げることと物価上昇期待を引上げていくことと両方ある。最近は、予想物価上昇率については昨年前半下がっていたが、後半は横ばいで推移している。そういたもとでイールドカーブコントロールしているので、実質金利は引き続き低い水準で推移している。日本の金融政策は2%の物価安定目標を早期に実現するために効果を発揮していくものである。よって、外国の金利が上がったからといってこちらの金利を上げなければならないというものではない。それによる為替への影響だが、為替は金利差だけでなく様々な要素で動くし、日銀は為替の見通しを前提としていないので、金融政策で物価安定目標を実現することを想定している。
昨年後半以降、世界経済がしっかりしてきた。好ましいことだが、将来の経済や物価は上振れリスクより下振れリスクの方が依然大きいと認識している。

Q:「リスク要因」に米国の金融政策とあるが?


米国の金利上昇で新興国経済への影響などが考えられ得る。ただ今の時点で問題が生じていることではないと思う。他方で、米国経済が加速していく中で金利が上がっていくということであれば、世界経済にプラスの影響もあるので、金利上昇だけでリスクが大きいとは言えない。ただ可能性として注視する必要があると考えている。

Q:マイナス金利で金融機関は収益悪化。今後はずす?残すなら深堀はある?


日本銀行は、イールドカーブコントロールのもとで、適切なイールドカーブの実現を図っているが、「適切な」とは、実体経済・物価・金融市場に対する影響を勘案してということ。ゆえに、金融機関への影響を考慮しつつやっている。さらに緩和を拡大しなければならない状況になればマイナス金利についても深堀する可能性もゼロとは言えない。日本経済は緩やかな回復を続けているし、物価も緩やかだが着実に上昇すると考えられるので、現時点でそれらがどうこうではなく適切な金融緩和を進めていく。

Q:黒田氏は就任から4年だが、金融政策の効果や可能性について認識は変わった所がある?


日本銀行は2013年4月に2%の物価安定目標を2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現することを目指して量的・質的金融緩和を導入した。日本の経済や物価は大きく好転しており、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった。一方で、2%の物価安定目標は実現できていない。その背景としては昨年9月に公表した「総括的検証」で示した通り、原油価格の下落、消費増税後の需要の弱さ、新興国発の市場の不安定化などの逆風によって実際の物価上昇率は下落し、予想物価上昇率も引きずられた。それが主な原因であると考えている。そうした中で、2%の物価安定目標の実現を堅持しており、必要に応じて政策面での対応を実施してきた。今後も強力な金融緩和を推進していく。

Q:市場では黒田氏続投の見方もあるが、指名を受けたらどうする?


私の任期は2018年4月まで。総裁の任命は国会の同意を得て内閣が任命する。何か申し上げる立場にない。

Q:原油が急落しているが打撃になる?


原油価格の短期的な動きは予見しがたい。原油価格が下落していることは事実だが、それがどういった理由かは定かではない。日本銀行は原油価格について特別な知見があって今後の見通しを作る立場ではないので、あくまで毎回の展望レポートの時に先物市場などの動向は見ている。原油価格が物価に影響することは事実だが、足元の物価は原油価格だけでなく需給ギャップなどに左右もされる。今の所、日本経済の潜在成長率を上回る成長が続くと見ているので、需給ギャップはさらに縮むと見ているし、プラスになっていく状況だと思うので、それらを反映して物価上昇率も高まっていくと思う。いずれにしても昨年の原油価格の30ドル割れから見れば、物価を押し上げる方向に働きつつあると思う。将来はまだわからないが。

Q:米国は今年利上げ3回見通しだが、日本にとっては緩和効果↑で好ましい?


利上げ3回の見通しについて何か申し上げることはないが、仮に年3回上げるとしても米国経済が成長を遂げていくということとセットで起こり得ること。それ自体がマイナスになるとは思っていない。日本については、米国が上げたから日本も上げるということにはならない。そういう意味で直接的な影響はないと考えている。為替については金利格差論があって、ある時は短期金利であったり、長期や中期の金利であったり色々議論があるが、その時々で日米金利格差が円ドルのレートと即している時もあるしそうでない時もある。為替という多くの要素に影響されるものについて、単なる二国間の金利格差だけで色々いうのは予測としても当たらないし、政策論としても海外の金利に左右されることはないと思っている。

Q:4月の日米経済対話の「財政・金融政策の連携」はどう捉えている?


日米経済対話の具体的な内容や体制等については政府間で調整が行われるので、現時点で存じていない。

Q:CPIが1%あたりに達すると長期金利上昇圧力が高まって日銀が抑えられないとの指摘があるが?


本年の後半にかけて、CPIが1%近くになるのではないかとの観測はあるかもしれないが、そういったことで機械的に金利を上げていくという考え方はない。それは、我々の政策というのは、物価安定目標をできるだけ早期に実現するためにやっていること、物価の基調的な変動を的確に評価する必要があるので、様々な指標を点検して、特に需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率の動向、そしてその背後にある経済の動きといったものを総合的に判断して議論するので、CPIが1%になったら金利を上げるなど、機械的なものは考えていない。これらの金融政策の判断とは別に金利を引上げざるを得なくなるといったようなことは全く考えていない。イールドカーブコントロールは十分機能しているし、今後も機能していく。もちろん、ピッタリ0%に釘付けするというものではなく、0%程度と言っているし、政策金利残高に対する付利は日銀が決める金利なので、これはピッタリ決められるが、長期金利の操作目標は、市場で決まってくるものについて操作目標を決めて、それになるように長期国債の買い入れを進めていくということなので一定の幅がある。

Q:中央銀行がなぜ財務に配慮しながら金融政策をやらなければいけない?


この点については、引当金の制度を拡充して日本銀行の収益の振れを小さくすることにした。いずれ出口論が出てくるわけで、そうなれば収益が減少していくので、日本銀行は収益を上げることを目的としていないが、国とは違う法人だし、国だけでなく民間の株主もいるので、その財務状況というのは収益の振れが大きくなるのを避けて適切に考えていく必要がある。また、利益が上下大きく振れると国庫も大きく振れるので、国にとっても好ましくない。ゆえに、日本銀行自身としても財務状況は適切に管理していく必要があるし、政府との関係においても適切に管理していく必要がある。ただ、それが最大の目標ではなく、それは考慮しつつも日本銀行は物価の安定が最も大きな目標。

Q:日銀の収益が悪化して政策が行えなくなる可能性もないとは言えない。財務省と新しい取り決めを作る可能性は?


そういう話はない。そういう必要性があるとも考えていない。日本銀行は法律に沿って運営されているし、そういった事態になると考えていない。そもそも中央銀行の役割は、物価の安定であり、金融システムの安定。そのために必要なことを行っていく。

日銀総裁会見

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