2018年12月20日 日銀総裁会見 ノート

本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとで、これまでの金融市場調方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利ついては10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行います。その際、長期金利は、経済物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得るものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をメドとしつつ、弾力的な買入れを実施します。
また、長期国債以外の資産の買入れに関しては、これまでの買入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITの買入れについては、年間約6兆円、年間約900億円という保有残高の増加ペースを維持するとともに、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて買入れ額は上下に変動し得るとしています。
わが国の景気の現状については、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで緩やかに拡大していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は総じてみれば着実な成長が続いています。そうしたもとで、輸出は増加基調にあります。国内需要の面では企業収益が高水準で推移し、業況感も良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けています。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも緩やかに増加しています。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しています。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しています。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けています。また、金融環境については極めて緩和した状態にあります。
先行きについては、わが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられます。国内需要は極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調を辿ると考えられます。輸出も、海外経済が総じてみれば着実に成長していくことを背景に、基調として緩やかな増加を続けるとみられます。
物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は1%程度となっています。予想物価上昇率は横ばい圏内で推移しています。先行きについては、消費者物価の前年比はマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや、中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。
リスク要因としては、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクリスクなどが挙げられます。
日本銀行は、2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。

 

Q&A

Q:世界経済について、米中両国の対立激化、あるいは原油価格の下落など、世界経済の下振れを示唆する動きが相次いでいますが、日銀が目指している2%の物価上昇のモメンタムに影響はないのか、総裁のご見解をお聞かせください。


A:日本銀行としては、わが国経済の見通しについて、確かに海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きいと判断しています。特に、米中間の貿易摩擦を始めとする保護主義的な動きの帰趨には注意が必要であると思います。この先、仮に貿易摩擦が長期化するようなことがあれば、この問題は、内外経済に広く影響を及ぼす可能性もあります。
もっとも、IMFの見通しによれば、世界経済は足許幾分下方修正されたとはいえ、2019年にかけて3%台後半の高めの成長が続くと予想されています。また、先日の短観の結果や、この間の企業ヒアリングなどによれば、わが国についても、これまでのところ貿易摩擦の影響は限定的なものにとどまっていると考えています。こうした点を踏まえると、様々なリスクに注意を払う必要はありますが、現時点では、わが国の景気が先行き緩やかな拡大を続けるという中心的な見通しに変化はないと思います。物価面でも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで引き続き物価安定の目標の実現に向けたモメンタムは維持されており、消費者物価の前年比は2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えています。

 

 

Q:ECB量的緩和の年内終了を決め、一方でFRBは来年の利上げペースが鈍化するとみられています。こうした中で、日銀は世界経済が悪化し た際の政策の余地が乏しいのではないかとよく指摘されますが、総裁のご見解をお聞かせください。


A:各国の金融政策は、あくまでもその国の経済・物価の安定を実現することを目的として行われていますので、経済・物価情勢が異なれば、各国の金融政策の内容や方向性に差が生じるのは、ある意味で当然だと思います。そのうえで申し上げると、将来、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するために必要と判断されれば、もちろん適時・適切に追加緩和を検討していくことになると思います。その際には、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入時に公表した通り、緩和の手段として、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、様々な対応が考えられますが、いずれにせよ、そうした事態になったときに適切に判断して行うことになると思います。

 

 

Q:株価のことをこの場で尋ねるのは適当でないかもしれませんが、今日たまたま日銀にとって今年最後のMPM(日銀金融政策決定会合)の日に、米国も日本も今年一番株価が安くなったタイミングです。マーケットとしては、やはり先行きに大きなリスクがあることを敏感に感じ取っている結果ではないのかと思うのですが、この市場の懸念を総裁はどうご覧になっているかお聞かせください。


A:米国の株価が大幅に下落した10月の前半以降、米中間の貿易摩擦など様々な要因から投資家のリスク回避姿勢が強まっており、日本を含む内外の株式市場では、現在もまだ若干振れの大きい展開が続いているとみています。もっとも、わが国も欧米も株価のベースとなる企業収益の見通しは総じてしっかりしていますし、経済のファンダメンタルズにも大きな変化はみられていません。そうした中で、為替市場も比較的安定した動きを続けています。日本銀行としては、株式市場も含めた内外の金融市場の動向が、わが国の経済・物価に与える影響について、引き続き注意深くみていきたいと考えています。

 

 

Q:今年1年を振り返って頂きたいのですが、総裁は、日本のデフレマインドは思った以上に根強いものがあるとおっしゃっていましたが、今年 1年で日本のデフレマインドはどのように変化したとお考えでしょうか。


A:これはなかなか難しい問題で、色々な指標でみることができると思いますが、典型的には労働市場が非常に引き締まり、完全雇用といわれるように、失業率も 2%台前半まできている割には賃金の上昇がやや鈍いですし、物価も、最近の動きは若干原油の動向に影響されていると思いますが、生鮮食品とエネルギーを除いてみてゼロ%台半ばくらいで動きがやや鈍いです。そうした中で予想物価上昇率も一時下がった後に上がってきたのですが、このところは大体フラットで、加速する状況にはまだなっていません。このような賃金・価格の決定行動、そして予想物価上昇率をみても、1998年から2013年まで15年間デフレが続いたもとで生じた、賃金や物価があまり上がらないことを前提にした考え方や慣行からなかなか抜け切れていないといえると思います。その中でも、労働集約的なサービス業を中心に賃金は上がり、運輸や外食などで価格も上がってきていますし、最近の短観の販売価格DIも、非常に久しぶりにプラスの領域に入ってきていますので、いわゆるデフレマインドが少しずつ和らいできているとは思いますが、まだそれを払拭するには至っていないのは事実だと思います。今後を展望すると、需給ギャップがプラスの状況が続く中で、実際の物価上昇率が上昇し、それを適合的期待によって反映して予想物価上昇率も上がっていくことで、徐々に2%に向けて物価上昇率は上昇していくとみています。ただ、そのテンポはかつて考えていたよりもやや鈍いことは事実だと思います。

 

 

Q;先程、世界のリスクについて、米中間の貿易摩擦や保護主義には注意が必要だということをおっしゃっていましたが、ペーパーにはわが国の金融環境は極めて緩和した状態にあるとあります。もしそのリスクが顕在化した場合に、日銀にはまだまだ打つ手は残されているのでしょうか。


A:現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入時に公表した通り、手段としては、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、色々なものが考えられると思いますが、IMFなどが示している通り、現時点では世界経済の中心的な見通しとして、依然3%台の後半という、かなり高めの成長が見込まれています。リスクが高まっていることはIMFも含めて皆認めているわけですし、様々なリスク、特に海外からのリスクには十分注意していく必要があると思いますが、現時点でその中心的な見通しが変わった、あるいは日本経済の先行きの見通しが変わったということはないと思います。注意したうえで必要になれば、先程申し上げたような緩和の手段はまだまだあると考えています。

 

 

Q:今のところと重なってくるのですが、世界経済の見通しについて先程総裁がおっしゃられたように、金融市場がこの秋非常に本日も日経平均株価が一時 700 円超下がり、不安定化しています。それは債券市場にも表れています。中国やヨーロッパの経済の減速が明確化してきているという懸念が市場で非常に強いように感じるのですが、この市場の認識と日銀の認識のギャップがあるのではないかという声も出ています。それについて総裁はどのようにお考えなのかということと、本日の会合でその辺りはどのようなお話があったのでしょうか。


A:会議での議論については、いつもの通りルールに従って開示していくことになっていますので、私から詳細を申し上げることはできませんが、まず中国経済については、そもそも成長率が長期的に趨勢的な低下傾向にあることは皆認めているわけです。そうしたうえで、今年は 6.5%程度、来年も6%台前半の成長をするだろうということは、中国政府だけではなく国際機関も認めています。現在、中国政府が行っている政策的な内需のテコ入れの効果もあり、国際機関等による今年・来年の中国経済に関する中心的な見通しはそれほど悲観的なものではなく、緩やかな減速が趨勢的に続く中で、大幅な景気後退は予想されていないと思います。それから、中国には十分な政策余地がありますので、対応していくのではないかと思います。欧州経済は、自動車の環境基準強化の影響など、いくつかの一時的な要素があり、減速していることは事実ですが、それでもまだ潜在成長率を上回る成長が続いています。従ってECBもあのようなステートメントを出しているわけで、私どもの認識が、マーケットの世界経済の認識と非常に離れているとは思っていません。
マーケットはマーケットですから何とも申し上げられませんが、このところの動きは、米国発で株が落ちると世界の株が落ちる、米国発で長期金利が下がると世界の長期金利も下がるという傾向が若干あることは事実です。他方で、為替が比較的安定していることからみると世界経済、米国、日本、欧州あるいは新興国で、それほど大きな変化が起こっているとは市場もみていないのではないかと思います。ただ、金融市場の動きには、引き続き注意していきたいと思っています。

 

 

Q:米国金利の低下を受けて、日本の長期金利も低下して、イールドカーブフラット化しています。日銀では過度なイールドカーブのフラット化 が、金融面への影響を通じて、日本の経済活動にも悪影響を及ぼすと、そのように以前分析されていると思うのですが、現在のイールドカーブのフラット化、もしくは更なるフラット化というものが、日本の経済・物価に悪影響を及ぼす可能性について、今の段階で総裁はどのようにお考えでしょうか。


A: 2年前、イールドカーブ・コントロールを導入する前に総括的な検証を行ったうえで、超長期等の金利が下がってイールドカーブが過度にフラット化することは、経済を押し上げて物価安定の目標を実現するうえで 必ずしも望ましくないため、適切なイールドカーブが実現されるようにしました。今年7月の金融政策決定会合では、資産買入れをより弾力的にすることとしました。特に今年の前半は10年物国債金利が非常に狭い幅で動き、しばしば取引が成立しないということがあり、国債市場の機能度が低下しているように思われましたので、経済・物価・金融情勢を反映して、もう少し幅広く動くのが当然であるということを申し上げました。
今も、欧米の長期金利が下がる中で、日本の長期金利も下がっており、これ自体は何ら問題ではないと思います。10年物国債金利の操作目標をゼロ% 程度とすることは全く変わりませんし、その変動幅が従来のようにあまりに狭いことは、マーケットの機能度の面で問題があるため、もう少し幅の広い中で経済・物価・金融情勢を反映して変動することは認めるということです。私自身は今の金利変動、特に海外の長期金利の動向を反映して低下しているということ自体は、別におかしいことではないと思っています。

 

 

Q:最近の原油価格下落に加えて、今後を展望した場合、携帯電話料金の値下げや幼児教育の無償化等、制度面を含めて物価を押し下げる要因が並んでいると思います。こうした要因は一時的に物価を押し下げる反面、実質的な所得の増加をもたらす面もあると思うのですが、こういった一連の物価押し下げ要因が、インフレ期待や経済・物価の見通しに与える影響はどのようにお考えでしょうか。


A:基本的な考え方としては、原油価格や携帯電話料金、あるいは幼児教育の無償化等は一時的なインパクトです。私どもが基準にしている物価の基調に対してどうなのかということについては、直接的には一時的な要因であると言って良いと思います。ただ、わが国の場合には、従来から申し上げているように、適合的期待による予想物価上昇率への影響がかなり大きいので、かつても2014年の夏頃から2016年の初めにかけて、原油価格が110ドルくらいから30ドルを割るくらいまで落ちたときに、実際の物価上昇率も落ち、そうしたもとで予想物価上昇率も下がってしまったことがありました。そういった点には十分注意していく必要があると思いますが、携帯電話料金あるいは幼児教育無償化といったこと自体は一時的なものですし、おっしゃるように実質的な所得を引き上げるという面もあるでしょうから、消費に対してプラスになる面もあるかもしれません。いずれにしても、予想物価上昇率の動向は引き続き注視していきたいと思っています。

 

 

Q:金融緩和の副作用についてお伺いします。総裁は11月の名古屋やパリ・ユーロプラスの講演で、金融緩和が長く続くと金融システムに不安が出たり、金融仲介機能が停滞するという2つのリスクについて言及されています。金融システムへの不安と金融仲介機能の停滞というのは、少し抽象的でイメージが湧きにくい部分があるのですが、仮に一段と緩和が長引いた場合に、金融システムや金融仲介機能にはどのような影響が及ぶのか、可能な範囲で結構ですので具体的なイメージを教えて頂けますでしょうか。


A:いくつかの要素が複合的に絡んでいますので、簡単には申し上げにくいのですが、例えば金融機関、特に地域金融機関については、業務純益が低下する傾向がみられています。地域金融機関の場合には、どうしても人口や企業数の減少が効いてくるため、金融政策あるいは金利状況如何にかかわらず、そうしたことが長期的、構造的に影響を与えていると思います。金利の大幅な引き下げに限った場合、副作用にどういうものがあり得るかについては、半年毎の金融システムレポートでもかなり詳しく書いてあります。1つは利鞘が減って業務純益が低下していった場合に、金融機関が経済に必要な融資を提供できなくなる、あるいはそれが細っていくという懸念があり、他方ではそういった業務純益の低下に対して非常にリスキーな投融資を行うことになると、それが反転した場合には金融システムの安定性に障害が出てくるおそれがある、という両方向があり得ます。しかしながら、金融システムレポートでも述べていますように、現在そういうことが起こっているわけではないですし、またわが国の金融機関は相当潤沢な資本と流動性を持っていますので、金融システムの耐性、強さというのは、まだ十分あることは確かだと思います。ただ、非常に長期にわたって低金利あるいは利の縮小が続いたときには、先程申し上げたような2つの方向のリスクがあり得るということには十分注意しつつ、必要な金融緩和を続けていくということだと思います。

 

 

Q:副作用について追加でお尋ねします。市場では一部でそうした副作用への配慮から出口を探るのではないかという観測があったようです。最近の世界経済の不安定化で、そうした観測はなくなったようですが、総裁が追加緩和を示唆する中で、そうした副作用に対してどのように対処していくかと、副作用が既に累積している中で、本当に追加緩和が可能かどうか、追加緩和したときの影響はどのようなものがあるかについて教えてください。


A:私どもは、あくまでも 2%の物価安定の目標を達成することを最大の使命として金融政策を運営しています。現時点で、出口を探ることは全くありません。いつも申し上げているように、出口について具体的に議論するのは時期尚早ですので、その点は誤解がないように、今後とも明確に申し上げていきたいと思います。
現時点で、副作用が顕現化して金融仲介機能に障害が出るとか、過度なリスクテイクで将来大きな問題を生じ得るような状況にはなっていません。更に、わが国の金融機関は潤沢な資本と流動性を持っていますので、今の時点で、何か問題があるので金融政策を変更することが必要だとも思いませんし、考えてもいません。金融政策は、金融システムを通じて実体経済に影響を与えますので、金融システムが正常に機能することの必要性は非常によく理解できます。その点には十分配慮しつつ、必要に応じて金融庁等とも十分な連携をして、金融システムの健全性を保っていくように努力したいと思っています。

 

 

Q;ETFの購入について伺います。おそらく年間ベースでは初めて、今年は購入額6兆円を突破したと思います。本日の公表文にもある通り、あるいはかつてご説明された通り、6兆円は約6兆円ということだと思いますが、突破しましたので大体どのように考えたらよいかと。かねて、ETFの購入の弊害については、規模からみてそんなに問題がないとおっしゃっていたと思いますが、そうは言ってもやはり、量が増えてくれば流動性が少ない株の株価形成に影響が出たり、あるいはガバナンス上問題があるのではないかという指摘もあります。改めてETF購入の副作用や弊害についてどのようにみているか、お聞かせください。


A:ETF購入は年間約6兆円で、かつ7月の決定会合でリスク・プレミアムに最も効果的に働きかけるよう、より弾力的に運用することになっており、それに則して月毎のETFの買入れ額は従来よりかなり大きく上下に変動しています。何か特別なことが起こっているのではなく、むしろ弾力的な運営が行われているということです。購入の弊害云々については、現時点で、マーケットバリューの4%程度をETFを通じて日銀が持っていますが、それが東京の株式市場に歪みや大きな影響を与えていることはないと思います。また、東京の株式市場全体を最も平均的に反映するTOPIX連動のETFの購入を増やして、個別株に対する影響をより排除するようにしています。ガバナンスの点については、ETFを誰が購入しても、投資信託委託会社が適切に株主権を行使していますので、特別なガバナンスの問題があるとは思っておりません。

 

 

Q:先程、長期金利について言及されました。日銀は今、大体 0.2%程度の上下の幅を許容されていると思いますが、現在、総裁としてマイナスにいく可能性についてどのようにお考えかということと、もしマイナスになって、そのままそこにとどまる形になると、イールドカーブ全体がそのまま下がってしまうので、金融機関への副作用という点で問題を起こし得ると思うのですが、その点について総裁はどのようにお考えでしょうか。


A:金利の先行きを予測することは適切でないと思いますが、仮定のご質問としてお答えすると、仮にマイナスになったとしても、従来の±0.1%の倍ぐらいの幅で動くのは当然と申し上げていますので、その範囲でマイナスになっても、それ自体としては問題ないと思います。金利の動きが経済・物価、内外の金融市場の動きなどを反映して動いているのであれば、その幅の範囲内で動くこと自体は、むしろ国債市場の機能度が高まるので問題はないと思います。ただ、そうしたことと離れてその幅の範囲内であっても、全く違う状況で動く場合には、従来から公表文にもある通り、例えば、指値オペなどを行う可能性があると申し上げています。いずれにせよ、ゼロ%程度という長期金利の操作目標は全く変えていませんし、長期金利が従来よりも若干大きい範囲で動いていることについては、特に問題だとは思っていません。

 

 

Q:政府の来年度予算が明日閣議決定の予定で、消費税率の引き上げに伴う対策として2兆円ぐらいが盛り込まれる見通しです。かなり大型かなと思うのですが、それについての評価と、そうすると結果として政府予算規模が100兆円を超えるということについての総裁の見解を聞かせてください。


A:消費税率の引き上げがそもそも日本経済にどのような影響を及ぼすかについては、従来から申し上げている通り、来年10月の引き上げは、前回に比べるとかなり小幅な影響にとどまるとみています。更に、政府は最近、消費者へのポイント還元支援やその他様々な対策を決め、予算や税制改正に反映させるということを決定していますので、こうした取組みも税率引き上げの影響を軽減して、経済の改善基調を持続することに資するのではないかと思っています。
いずれにしても、消費税率の引き上げの影響については、前回に比べるとそもそもかなり小幅なものになると思われていましたし、需要の平準化その他様々な対応策がとられていますので、影響は極めて小さくなっていると思います。そのこと自体について私どもが何か申し上げるつもりもありませんし、インパクトをミニマイズするという点では意味のあることではないかと思っています。

 

 

Q:安倍首相が、任期の今後3年間のうちにデフレ脱却の道筋をつけたいという発言をしています。総裁はデフレ脱却宣言をするタイミングといいますか、どういった条件が整えばデフレから脱却したと言えるとお考えでしょうか。 例えば、2%の物価目標が達成したということが前提にあるのでしょうか。


A:ご承知のようにデフレ脱却については、政府がいくつかの基準を示して、それらが満たされた場合に宣言するとしています。現時点で、持続的な物価の下落という状況ではない、デフレという状況ではないことは、政府も私どもも言っているわけですが、デフレ脱却については、政府がいくつかの指標をみて判断されることだと思います。
他方、私どもは2%の物価安定の目標を2013年1月の金融政策決定会合で決め、これが政府との共同声明にも盛り込まれています。あくまでも 2%の物価安定の目標を実現することが、私どもにとっての目標であり、それに向けて必要な金融緩和を続けていくということに尽きると思います。

 

日銀総裁会見

 

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