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2016年12月20日 日銀総裁会見 ノート

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金融政策決定会合

本日の決定会合では、イールドカーブコントロールのもとでこれまでの金融調節方針維持を賛成多数で決定した。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに長期金利について10年物国債金利が0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行う。買い入れ額については概ね現状程度(保有残高の増加額年間約80兆円)をメドとしつつ金利操作方針を実現するよう運営する。また、長期国債以外の資産買い入れは現状維持を賛成多数で決定した。わが国の景気については「緩やかな回復基調を続けている」と前回対比判断を一歩進めた。海外経済は新興国の一部に弱さが残るものの緩やかな成長が続いている。そうしたもとで輸出は持ち直している。国内需要は企業収益が高水準で推移し、業況感も幾分改善する中で設備投資は緩やかな増加基調にある。雇用・所得環境の着実な改善を背景に個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。公共投資は横ばい圏内。以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して鉱工業生産は持ち直している。また、金融環境は極めて緩和した状態にある。先行きについては、緩やかな拡大に転じていくと見ている。国内需要は極めて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出等を背景に企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も海外経済の回復を背景として基調として緩やかに改善すると見ている。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、小幅マイナス。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。先行については、消費者物価の前年比はエネルギー価格下落の影響から当面小幅のマイナスないし0%程度で推移すると見られるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率が高まるにつれて2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。リスク要因としては、中国をはじめとする新興国、資源国の動向、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、ブレグジット問題、金融セクターを含む欧州債務問題、地政学リスクなどがあげられる。日銀は2%の物価安定目標の実現を目指してこれを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作量的・質的金融緩和を継続する。生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する。今後も経済・物価金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタム(勢い)を維持するため、必要な政策の調整を行う。

Q&A

Q:米国大統領選後、大幅な円安で物価の押し上げになるが物価目標達成時期は?


円安は輸入物価の上昇を通じて直接的に物価の押し上げ要因になるが、長い目で見ると需給ギャップや予想物価上昇率の改善などを通じて間接的に物価に影響することも考えられる。景気や物価の見通しについては今後の金融市場動向を踏まえつつ次回の決定会合で議論して展望レポートで示す。

Q:米国大統領選後、株価も堅調だがETFの買い入れはまだ必要?どういう状況になれば縮小する?


ETF買い入れは、量的・質的金融緩和の枠組みの一つの要素。資産価格のプレミアム(おそらくリスクプレミアムのことを言ってると思います)に働きかける観点から行っており、特定の株価水準を念頭に実施しているものではない。よって、ETFの買い入れは、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するために必要な政策と考えており、買い入れ方針を維持することにした。先行は決定会合で適切に判断していく。

Q:トランプ相場と景気判断引き上げの関係は?今後の景気の見通しへの影響は?


今回の景気判断の引き上げの背景は3つある。1つめは、米国をはじめ先進国経済が順調に推移するもとで新興国経済の減速感が和らいでいること。2つめは、そうした海外経済改善を受けて横ばいだった日本の輸出や生産の持ち直しが出てきたこと。3つめは、雇用・所得環境改善のもとでの個人消費の持ち直し。トランプ氏の政策はこれからなので何とも言えないが、減税インフラ投資に伴う金利上昇は一定の影響があるとは思う。が、今回の景気判断の引き上げの背景は上記3つによるもの。

Q:現在の政策の枠組みでは、物価目標2%に達する前に長期金利目標引き上げも可能?だが、長期金利引き上げはどのような状況になった時に行う?また、さらに円安が進行して国内の消費に悪影響が出れば円安回避で長期金利引き上げをする?


長短金利操作付量的・質的金融緩和は、、物価安定目標2%をできるだけ早期に実現するためのもの。2%に向けたモメンタム(勢い)を維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すことにつきる。現状、2%までは距離があるので、現在の金融市場調節方針のもとで強力な金融緩和を推進していくことが適切。金融政策は為替をターゲットにしていない。現在は円安というよりドル高。世界的にドルに対して弱くなっている。日米の金融政策の違いが為替に影響しているとは思うが、現時点で円安で問題になるといった見通しは持っていない。現在の為替の水準は、今年の2月ごろの水準。別に驚く数字ではない。

Q:イールドカーブコントロールは上手く機能している?導入時と現在とで、日銀が理想とするイールドカーブは変わった?


イールドカーブコントロールというか、長短金利操作付量的・質的金融緩和は上手く機能している。9月導入時から現在まで決定会合で議論してきたが、イールドカーブコントロールのもとで、現在イールドカーブは適切に形成されている。

Q:トランプ相場は思わぬ追い風?景気判断引き上げは実感を伴わないが、賃上げ要請はしていく?


今年前半は、新興国経済減速によって国際金融市場は不安定になった。さらに6月にはブレグジットもあった。海外経済の不確実性の高まりで円高株安になった。ただ、世界経済自体はそういった悲観論にも関わらず日欧米、さらに新興国も年後半にはそのような状況にはなく、実体経済がしっかりしてきたことがわかってきたことから市場が持ち直した。よって、トランプ相場が追い風かと言われれば、向かい風とは言うつもりはないが、むしろ前半に向かい風があったのが、向かい風がなくなったということかなと思う。実感云々は重要な点で、雇用・所得環境はずっと改善している。失業率は3%程度。賃金が上昇する環境は整っている。春闘を通じて賃金が上昇していくことは家計の実感が確かなものになるし、消費もしっかりしていくので、春闘の動きは期待を持っている。

Q:さらにドル高円安は進んでもおかしくない?長期金利上昇は、米国の長期金利上昇だけでなく日本経済の改善もある?その場合、多少の金利上昇は容認する?


為替政策は財務省が一括して責任を持っている。ゆえに、為替水準について言うのは適切でない。先ほどは「2月水準に戻った」と言っただけ。長期金利上昇は、様々な要因があり、市場の期待が上がってきているのもあるかもしれない。ただ、日銀はイールドカーブコントロールで適切なイールドカーブを促しているので、海外金利上昇によって当方の長期金利も上昇していい、操作目標を引上げる、といったことは全く考えていない。

Q:イールドカーブコントロールや大量国債買入れが財政を弛緩させている批判があるが?財政規律が今後失われても金融政策のせいではない?長期金利が0%より上にあり、指値オペや超長期債の買い入れ増額をしたが、今後海外要因で国内金利が上昇した際、10年債への指値オペや買入れ増額をしなければならない状況がきた場合、財政支援をしているのではないと言い切れる?直接引き受けをしなければ財政ファイナンスではないと考えてる?


財政規律は非常に重要。これは中央銀行がコントロールするものではない。政府と国会が決めること。そこに権限と責任がある。それがデモクラシー(民主主義)の基本と考えている。指値オペや超長期債の買い入れ増額は、決定会合で決まった方針に従って行っているので、適切なイールドカーブを促す観点から行った。今後も必要であれば随時行う。どこのゾーンはしていいとかどこのゾーンはしてはいけないとか、そういうことは全くない。あくまで決定会合で定められた方針に従って行う。

Q:米国が来年複数回利上げをする見込み。日銀が金利をペッグしていると円安・物価上昇が見込めるがこれは望ましい?10年債利回りの0%目標は当初キャップだと思ったが、今後は上昇によってフロアにもなる?


0%目標は、キャップやフロアではなく操作目標。これ以上上がってはいけない、下がってはいけないというキャップやフロアではない。あくまで操作目標。Fed(FRSFRBFOMCの総称)がどのような金利を決定していくかをコメントすることは控えるが、Fedは物価の安定と雇用の極大化を目標として適切に政策を運営してきたし今後もそうするだろう。いずれにしても長短金利操作付量的・質的金融緩和は、あくまで物価安定目標2%を早期に実現するためのもの。

Q:オーバーシュート型コミットメントもあるので、物価安定目標2%を達成するまで、長期金利のターゲット引き上げは物価が2%達成するまで行わない?それと、今年の感想は?


オーバーシュート型コミットメントは、「生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する」ということ。長短金利操作付量的・質的金融緩和における短期の政策金利と長期金利の操作目標については、毎回の決定会合で議論されること。物価安定目標2%まではまだまだ遠いので、それらについて今議論するのは時期尚早。2016年は年初から新興国経済、特に中国の減速を背景に国際金融市場が不安定になった。その状況の中で石油価格も30ドル割れとなったし、6月はブレグジットがあり、海外経済の不確実性の高まりが意識された。世界経済への悲観的な見方が拡がっていたように思う。日本国内もそれらの影響から為替や株に影響が出た。また、天候不順などから一部弱めの動きも出た。その中で日本銀行は、1月にマイナス金利を導入、7月にETF買い入れ増額、外貨資金調達環境安定のための措置、9月には過去3年の金融政策の総括的な検証を経て長短金利操作付量的・質的金融緩和を導入した。年後半は、新興国の成長のモメンタムが緩やかながら高まり、世界経済全体も上向きつつあると思う。また日本経済も輸出・生産の持ち直しが明確になっており、個人消費も雇用・所得環境が改善するもとで持ち直しの軌道が増えている。よって、日本銀行はできるだけ早期に物価安定目標2%を実現するために、長短金利操作付量的・質的金融緩和のもとで金融緩和を着実に推進していく。

Q:金融機関の貸出態度は業種別で見ると不動産への割合が高く運用先がない表れと見れるが?また、中でもアパートローン・貸家関連が明らかなバブルとも見れるが?


不動産向けの貸出が増えているのは事実。ただ、金融システムレポートでも報告している通り、現時点で不動産市場で行き過ぎがあったり、金融機関のリスク管理上の悪影響への懸念がある状況には至っていない。貸家の実需も影響していると考えている。そのファイナンス。今の所、マクロ的な貸家の需給バランスや金融機関のリスク管理などの大きな影響が生じているとは見ていないが、貸家業向け貸出は長期のものが多いので、金融機関に対しては実効段階での収支見通しだけでなく、実効後の物件の状況変化を早期に把握してリスク管理をするように促していきたい。

Q:ETF買い入れ増減の条件(状況)は?


その時の株式市場を含めた金融市場全体の動向や経済・物価の動向によって、長短金利操作付量的・質的金融緩和全体の中で考えていく。ゆえに、これだけを取り出して、株価が上がったからやめるとか、下がったから拡大するといったことは考えていない。

Q:日銀と国民のコミュニケーションは十分?金融政策の限界、世界的に金融政策と財政政策両面が必要との向きになっているが?


コミュニケーションは、政策委員会のメンバーやスタッフが努力しており、改善してきているとは思うが改善の余地はある。ただマイナス金利など、新しい金融政策を導入する際に、事前に説明するのは難しい。よって、コミュニケーションの改善が金融政策を事前に話してそれを決定会合で後付けしていく形は難しい。ただ、様々な形でコミュニケーション強化は必要でそれは可能なので努力していく。金融政策の限界は様々な形があり一概に言えないが、政策をやれば副作用も考慮しなければならない。ただ、壁があってそれ以上進めなくなるというような限界があるとは思っていない。国債は買入れできないとか、金利は下げられない、といった限界論は持っていない。副作用を考慮しつつ必要な政策を打っていく。それは各国の中央銀行も同じように考えてやっている。

Q:長期金利の操作は指値オペで対応する?国債購入額に問題はない?


長期金利の操作目標は0%程度。きっちり0%でないといけないというものではない。±0.1%ということでもない。0%程度。その操作目標のために適切なオペをやってきたし今後もそうする。国債の購入額は80兆円程度をメドとして行うことにつきる。今後は適切なイールドカーブを実現する結果として出てくるものだが、当面現状程度の買い入れを続けていく。

Q:出口論は総裁の任期中には議論されない?そもそも平和的な出口論を持っているのか?


(金融政策の)出口は、金利水準の調整、あるいは拡大した日銀のバランスシートの扱いが課題となるが、それを実際どのような形で進めていくのかは、その時々の経済・物価情勢あるいは金融市場の状況等によって変わり得るもの。早い段階から具体的なイメージを持って話をするのは適当でない。市場との対話の観点からも混乱を招く恐れが高いので適切な時期に出口論を議論していくことになる。その出口論の議論がいつ行われるかを事前に申し上げるわけにはいかないのは、あくまでその時々の情勢や物価安定目標の関連で議論しなければならないので、今からいつというのは申し上げられない。よって、人気は2018年4月までだが、その時までに具体的な出口論が出てくるか出てこないかを今から申し上げることはできない。議論になる可能性もあるし、そうでないかもしれない。

日銀総裁会見

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