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2016年11月1日 日銀総裁会見 ノート

本日の決定会合では、イールドカーブコントロールのもとでこれまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定した。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに長期金利について10年物金利が0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行う。買入額は現状程度、保有残高の増加額年間80兆円をメドとしつつ金利操作方針を実現するよう運営する。長期国債以外の資産買い入れもこれまで通りとする。

展望レポートより

わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は持ち直しを続いており、公共投資は下げ止まっている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は横ばい圏内の動きを続けている。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持している。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。

先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残るものの、その後は緩やかに拡大していくと予想している。まず国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。
物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。なお、2%程度に達する時期は見通し期間の終盤(2018年度頃)になる可能性が高い。

こうした中心的な見通しに対するリスク要因は、海外経済の動向など経済・物価ともに下振れリスクの方が大きいと見られる。物価面では、2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い、強弱)は維持されていると見られるものの、前回の見通しに比べると幾分弱まっており、今後注意深く点検していく必要がある。なお、展望レポートについては、佐藤委員、木内委員から消費者物価が見通し期間中には2%程度に達しない前提の案が提出され否決された。金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。

Q&A

Q:総裁の任期中に物価目標達成は難しいと認めているが?

A:2%に達する時期の後ずれは、中長期的な予想物価上昇率の弱含みの局面が続いていることを反映した。中長期的な予想物価上昇率は、中央銀行の物価安定目標に収斂していく「フォワードルッキングな期待形成」と、現実の物価上昇率の影響を受ける「適合的な期待形成」の2つの要素によって形成される。「総括的検証」で示したように、中長期的な予想物価上昇率は、現実の物価上昇率が0%程度で推移する中で適合的な期待形成の要素が強く作用し、2015年夏以降弱含んでいる。これを反映している。

Q:米大統領選による世界経済・金融市場に及ぼす影響は?

A:日本銀行は米大統領選による世界経済・金融市場の動向を注意深く見ていく。

Q:2%程度に達する「2018年度頃」の範囲は?

A:範囲に関する議論はしていない。物価目標を下方修正したが追加緩和はしない。過去、2%に達する時期を後ずれさせても追加緩和をしなかったこともある。見通しと追加緩和が合うというものではない。モメンタムは維持されている。注意深く点検し必要な時に行う。

Q:任期中に物価目標達成しない責任は?

A:成長率や物価上昇率の先行きと任期に関係はない。物価安定目標を早期に実現するために適切な政策を打つに尽きる。

Q:求められれば再任する?

A:総裁の任期は5年と決まっている。ゆえに2018年の4月まで。日銀総裁の任命は内閣が決める。私がどうこうするものではない。

Q:イールドカーブコントロールで金利は維持されているが、20年債の金利は1%欲しいとの声もあるが?

A:日銀は日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに長期金利について10年物の金利が0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行う。日銀はこの2つの金利調整を行う。現在その他の金利について違和感はないが、今後の動向については毎回の会合で点検していく。超長期の金利については、経済・物価の先行きを反映して変動しつつも金融市場調節方針と整合的な形で市場において形成していくものと認識している。

Q:2%程度に達する時期は「2018年度頃」としているが実績値が安定的に超える時期は2018年度を超えることもある?

A:2%程度に達する時期は「2018年度頃」としているが、それより先までオーバーシュート型コミットメントが続く可能性はある。2%程度に達する時期が2018年度前半か後半かによって違う。一概に言えない。

Q:財政政策が出ることによって金融緩和の強化に繋がる可能性はある?

A:ある。財政政策で経済を刺激すれば、経済活動が高まり需給ギャップ縮小、失業率が低下する。それによって物価安定目標に近づく時期が早まる。

Q:企業が値下げに動いている。デフレは悪いことばかりでないとの経営者の声もある。企業や消費者のデフレマインドに中央銀行はどう働きかける?

A:現在物価上昇率が0%程度なので、企業が消極的になる可能性があり実際そうなっているためデフレマインドはそう簡単に払拭できないが、デフレが経済にとって好ましいということはない。原油価格等の影響で物価上昇率は一時的に変動するが、基本的に賃金と物価は共に上がっていくもの。ギャップは労働生産性の上昇があれば賃金の方がより上がるが、いずれにせよ物価が上がる時には賃金が上がり、賃金が上がる時は物価が上がる。物価が上がらず賃金が上がらない、経済活動が委縮するデフレがいいということは全くない。ただ、15年のデフレマインドの払拭に相当な時間がかかっていることは事実。ただ、そのもとでも原油価格の影響を除いた物価の基調はプラスにはなっている。QQE前はマイナスであったことを考えると変わってきていることは事実。ただ変わり切っていない。それは物価上昇期待が足元の物価に引きずられる「適合的な期待」の度合いが欧米に比べて非常に強い。そこが変わっていない。そこをフォワードルッキングな形になるようにオーバーシュート型コミットメントをしたし、足元でも潜在成長率を上回る成長が続いているし、来年度はさらにそれが加速する見通しも持っている。ゆえに、徐々にデフレマインドは払拭できると見ている。

Q:「物価安定目標2%に達するまでなんでもやる」が最近聞かれないが?総括的検証後に方針転換した?

A:そのようには全く考えていない。物価安定目標2%は日銀が決定し政府との共同声明でコミットメントしたもの。ゆえにあらゆる手段で実現しなければならない。必要なことはなんでもやる。総括的検証で明らかになったことは、QQEの効果とマイナス金利の効果。マイナス金利でイールドカーブが下がってフラット化した。フラット化の長期化は経済にとって必ずしもプラスではないので、イールドカーブコントロールによってイールドカーブを立てて(スティープ化)経済にプラスをもたらす。柔軟かつ持続性のある金融緩和を行えるようにした。

Q:展望レポートでは17年度の物価の中央値を1.5%としている。1年で1.6%も上昇する?実現できる?

A:QQE導入時は1年で1.5%まで上がっていたので非現実的ではない。来年は成長率が1%から1.5%に加速する。これは金融緩和下の政府による財政出動との相乗効果で成長率が加速すると見込んでいる。これにより需給ギャップが縮小し、失業率は低下して賃金・物価上昇率が高まることを背景としている。そして、原油価格が下げ止まったことでマイナスの効果は消える。また、物価が上がれば物価上昇予想も上がる。この3つからこの予想は不思議なことではない。

Q:物価安定目標2%は必要?

A:CPIが過大に出る傾向があるのは広く言われておりその程度は色々な議論があるが、そのギャップが縮小した話はない。そのもとで物価安定目標2%というのは合理的な目標と考える。欧米ではむしろそれを引上げるような議論もある。ただ、日銀は2%が適切であると考える。現時点でのグローバルスタンダードでもあると考える。金融機関の収益は過去3年極めて高い。ただ金利の低下で金融機関の収益を圧迫しているのは事実。その影響は考慮していく。他方でデフレに戻ってしまうと金融機関も弱るので、それらを考慮しながら物価安定目標2%をできるだけ早期に実現していく。

Q:ETF買入れ増額の影響をどう考える?

A:これによって市場が歪められていることはないと思う。ただ、特定のETFに集中していると日銀が様々な企業の筆頭株主になったり赤字企業の株を大量に買うことになるので、東証一部全体のETFを多く買う方向に変えた。東証の時価総額は500兆円を超えているので、年間6兆円の買い入れで市場全体が歪むことはないと考える。

Q:物価安定目標2%は金融政策だけでは難しい?何が必要?

A:物価を基調として決めるのが金融政策であるという見方に変わりはないが、物価が単に上がるだけではなく、そのもとで経済が持続的に適切な成長をするためには、金融政策だけではなく財政政策や構造改革が必要。金融政策と財政政策の相乗効果もある、構造改革や成長戦略も潜在成長率を上げることによって自然利子率が上がるので同じ名目金利のもとでも金融緩和効果が大きく出てくることに間違いはない。

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