利上げ観測でも米国の長期金利が上昇しない・円安が進まない理由(中立金利との関係)

 

2017年3月5日現在、米国の各連銀総裁やFRB理事、さらにイエレンFRB議長が3月の利上げに前向きな発言が相次ぐ中、米国の長期金利などの金利の伸びが限定的となり、ドル円は円安に進みにくい状況となっています。これは、米国の技術革新の停滞や人口の伸び鈍化を背景とする潜在成長率の低迷、中立金利の低迷で3月に利上げしたとしても今後の利上げ回数が増えないとの観測が高いためと考えられます。

 

中立金利とは?潜在成長率との関係は?


FRBのブレイナード理事やサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は、直近で「中立金利は短期的にも長期的にも低い水準で停滞する」「中立金利の低迷はしつこい」と指摘しています。

中立金利(ちゅうりつきんり)とは、経済に対して緩和的でも引き締め的でもない中立的な金利(経済の需要供給が均衡状態にある場合の実質金利)水準のことです。「自然利子率」「均衡実質金利」「Rスター(アールスター)」とも呼ばれ、インフレを考慮した実質利子率であり、中長期的に潜在成長率に連動するとされており、政策金利をどこまで上げるべきかを決める材料となります。米国における自然利子率は、金融危機前は2%程度でした。

政策金利の長期的な均衡水準は、「中立金利+目標インフレ率」とされています。政策金利の長期的な均衡水準は、FOMC(連邦公開市場委員会)における長期的な政策金利見通し(中央値)が目安となります。中立金利は、例えばFOMCにおいて長期的な政策金利見通しが3%であったとして、目標インフレ率が2%であったなら、FOMCが想定する”実質”の中立金利は1%となります。中立金利の水準が低いと政策金利の均衡水準も低くなり、政策金利の引き上げは限定的になります。中立金利が低い状況(潜在成長率が低い状況)で利上げをどんどん進めれば景気を一気に冷やす可能性があります。

現在、FOMCの長期的な政策金利の見通しは3%です。目標インフレ率が2%で1月の個人消費支出(PCE)が1.9%と目標に近く、FOMCが想定する中立金利は1%程度と考えられます。ゆえに、中立金利が低いため、利上げ回数は増えないだろうとの観測で米国の長期金利は伸び悩み、日米の金利差も拡がらないため円安には進んでいないと考えられます。

ゆえに、3月のFOMCで長期的な政策金利の見通しが上がるか注目だと思います。上がれば利上げに関しての円安要因になると思います。

また、根本的に長期金利は、潜在成長率と期待インフレ率リスクプレミアムの合計となります。利上げによって将来それらが下がると予測される場合は、利上げを行っても長期金利は上がりません。

 

中立金利の調べ方


この記事は2017年3月に書いた記事ですが、以後も役立つように、FRBが想定している中立金利ってどうやって調べればいいのか解説しておきます。

 

政策金利の長期的な均衡水準は、「中立金利+目標インフレ率」とされています。政策金利の長期的な均衡水準は、FOMCにおける「長期的な政策金利見通し(中央値)」が目安となりますので、想定されている中立金利を調べるにはまずそれを見る必要があります。FOMCにおける「長期的な政策金利見通し(中央値)」は、FOMCメンバーが適切と考える米国の政策金利「FFレート」の誘導目標の水準をドット(点)の分布で示した散布図「ドット・チャート」の「FF金利の予想分布」を見ます。

 

「FF金利の予想分布」は、姉妹サイトの「株式マーケットデータ」の「FF金利の予想分布(ドットチャートより)」のページで確認できますので参照してください。

 

例えば、「FF金利の予想分布(ドットチャートより)」のページの”2017年6月時点”を参考に解説すると、2017年6月時点においてFOMCは「長期的な政策金利見通し」を3.000%と想定していることを示しています。”19年末”の中央値の欄が”3.000%”となっていると思いますが、それが「長期的な政策金利見通し」です。

この「長期的な政策金利見通し」は、FRBが想定している”名目”でみた中立金利を示しています。”名目の中立金利”とは物価を加味していない中立金利ということです。

この時点において、FRBの目標インフレ率が”2.000%”であるとするならば、”実質”の中立金利は「3.000%-2.000%」で”1%”ということになります。”実質の中立金利”とは物価を加味した中立金利ということです。

これらを踏まえて、もう少し解説すると、例えば今後のFOMCで「19年末に実質の中立金利は1%にはならない、0.5%ぐらいじゃないか?」ってことになると、以後のFOMCで「長期的な政策金利見通し」が”2.500%”に引き下げられることになります。

ちなみに、FOMCが公表しているこういった「政策金利見通し」は、すべて短期金利の見通しを示しています。なぜなら、政策金利で誘導するのは短期金利であるからです。



 

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