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ECBのテーパリング(量的緩和縮小)による影響と解説

ECB(欧州中央銀行)

ECB(欧州中央銀行)は、現在(2017年7月時点)、量的緩和政策(QE)によって国債などの資産を月額600億ユーロの規模で買い入れており、2017年12月末までそれを維持することを決めていますが、ECBのドラギ総裁は、2017年6月の講演でユーロ圏の景気回復に自信を示し、また欧州の政治的リスクが後退していることから、将来の金融引き締め効果を狙って量的緩和政策を縮小させる「テーパリング」に踏み切るとの観測が高まっています。当面は金融緩和が必要であるとしている一方、「景気の回復が続くなかで政策スタンスを維持すれば、金融はより緩和的になる」ともしていますが、金融市場では、2017年秋にECB理事会でテーパリングで合意し、2018年から資産買い入れの減額に踏み切るとの見方が強いです。
また、ECBは現在、金融機関がECBに余剰金を預ける際に-0.4%の金利を適用するマイナス金利政策も導入しています。これは金融機関にECBに預金するよりも融資を促すように仕向けるものとして導入されましたが、テーパリング終了後は、金利の正常化も進めると見られているため、マイナス金利政策も転換点にきていると指摘されています。

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テーパリングによる影響

これまで、ECBは量的緩和政策によって国債などの資産を大量に買い入れていました。テーパリングはそれを縮小をしていくということです。ゆえに、テーパリングによってユーロ圏の長期金利は上昇(国債の価格は下落し金利は上昇)します。金利の上昇によってユーロは買われやすくなりますので、ユーロ高要因となります。
ECBのテーパリングによって、より懸念されているのは財政赤字が大きい南欧などの債務の多い国です。債務の多い国の国債は量的緩和政策によって買われ金利は低下していましたが、テーパリングによって金利が大きく上昇する恐れがあります。国債の発行が多い国の金利は上昇圧力がかかりやすくなりますし、金利の上昇は景気回復の逆風となります。また、イタリアなどは銀行の破綻問題などで金融システムは脆弱であるため、ECBの政策転換の影響は受けやすいとされています。そして、金利の上昇による景気の悪化によって、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党が勢いづくことも懸念されています。景気や物価が後退する事態が起こらなければ、テーパリングは確実で、その買入れの規模をどれだけ減額させるかが今後の焦点となりそうでう。

また、ECBのテーパリングは欧州だけでなく世界の金利にも影響する可能性があります。例えば、米国の長期金利は日本や欧州の金融緩和によって抑えられている面もあります。日本や欧州の金融緩和で米国の国債に資金が流入し、それによって米国は利上げしても長期金利が上昇しにくい状況となっています。低金利によって米国の経済は支えられているので、金利が上昇してしまうと景気が悪くなる恐れがあります。

テーパリングを行う理由

量的緩和政策などの金融緩和政策は、バブルを防ぐために景気や物価が回復すれば縮小させますが、ECBには、2018年からテーパリングに踏み切らなければならない理由があります。それは、買入れる国債が枯渇しつつあるためです。特にドイツの国債は品薄感が強く、これまでの緩和を続けようとすれば、ドイツ国債を買入れる比率を引下げて、イタリアなどの国債を買入れる比率を増やす必要がありますが、そうなると南欧に対する財政支援を行っているとされます。

追記

10月26日のECB理事会で量的金融緩和縮小を決定。出口戦略のシナリオが出てきました。概要(「ECBの量的緩和政策縮小・出口戦略のシナリオの概要」参照)は以下。

  • 資産買い入れ額を2018年1月から300億ユーロ/月へ
  • 2017年末→2018年9月に買い入れ期限延長
  • QE終了後も保有債券の償還元本を再投資(長期的に大規模としている)
  • 2019年末まで域内の銀行への融資(有担保)を継続

ドラギ氏はテーパリング(緩和縮小)ではなくダウンサイジング(緩和規模の縮小)であると強調、声明文で経済見通しの悪化や金融環境がインフレ目標と整合性がとれなくなれば量的緩和を拡大する用意があるとし、QE終了後も債券への再投資を継続し緩和継続姿勢を示したことでハト派的慎重的。一方、買い入れの資産構成への言及はありませんでした。

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